仕事とAIの不安

仕事のプレッシャーで心臓がバクバクする。冷たいもので顔を冷やすと落ち着く?ドイツの大学生25人の実験では、課題の合間に心拍が戻りやすく、ストレスのホルモンの上がり方も小さかったが、気分の差ははっきりしなかった

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わかっている度 ★☆☆ 低研究3本・公的指針0件を整理
古い洗面台と洗面器、かけられたタオル
Photo: FOTO:Fortepan — ID 100080: Adományozó/Donor: Jezsuita Levéltár. / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

締め切りが迫る、評価の面談がある、AIの導入で慣れない仕事を任された。そんな場面で心臓がバクバクして、手が冷たくなる人は少なくありません。「顔を冷やすと落ち着く」という話を聞いたことがあるかもしれません。研究では、体の反応が戻りやすくなった実験はあるものの、気分まで変わるかははっきりしていません。

3行でわかる

  1. ドイツの大学生25人の実験では、ストレスのかかる計算課題の前に冷たいマスクを顔に2分当てた組で、課題の合間の心拍が元に戻りやすかった。
  2. 同じ組では、ストレスのホルモン(コルチゾール)の上がり方も小さかった。一方、本人が答えた気分は、冷やさなかった組とはっきりした差がなかった。
  3. 研究はまだ少なく、人数も小さい。冷やすなら布で包んだ保冷剤を額から頬に当てる程度にし、顔を水に沈めて息を止めるやり方は避ける。

01 結論から言うと焦ったとき顔を冷やすと、落ち着く?

体の反応は落ち着きやすくなる可能性があります。ただし実験は1件・25人と小さく、気分の改善ははっきりしませんでした。「試してみてもよい、手軽な工夫の一つ」くらいの位置づけです。

顔、とくに額や目のまわりが冷たいものにふれると、体の「ブレーキ役」の神経(副交感神経)が働き、心拍がゆっくりになることが知られています。水に潜ったときに起きる反射と同じしくみで、研究では顔に冷たいものを当てる方法が「コールドフェイステスト」と呼ばれ、神経の働きを調べる検査として使われてきました。

この反射を、ストレスを和らげる方法として使えないか試したのが、次の実験です。

02 研究とデータでわかっていること顔を冷やした人は、何が変わった?

冷やしている間は心拍がはっきり下がり、課題と課題の合間の心拍も元に戻りやすかった。ストレスのホルモンの上がり方は小さかった。ただ、2回目と3回目の課題の最中は両方の組で同じくらい心拍が上がり、本人が答えた気分にも、はっきりした差がなかった。

約1%と約71%ストレス課題のあとのコルチゾールの最大の上がり幅(平均)。顔を冷やした組と、冷やさなかった組(ドイツの大学生25人、2022年発表)
20〜27%冷たいマスクを当てている間に下がった心拍の幅(直前の休みと比べた最大の下がり幅。3回それぞれの平均値)。同じ実験
61人首・頬・腕に冷たいものを当てたルクセンブルクの実験の人数。首と頬で心拍のゆらぎが増え、腕では増えなかった(2018年発表)
54人中8人10℃の水に顔をつけた健康な中学生のうち、脈の乱れ(期外収縮など)が記録された人数(スウェーデン、2025年発表)

Richerら(2022、ドイツ・エアランゲン=ニュルンベルク大学)[1]

参加者は、時間制限のある暗算を、成績を見張られながら解く課題を3回くり返しました(全体で約30分)。毎回の課題の前に、片方の組は冷たいマスク(−1℃)を顔に2分当て、もう片方の組は2分休みました。冷やした組は、マスクを当てている間に心拍が下がりました。課題の最中は両方の組で心拍が上がりましたが、課題と課題の合間の休みでは、冷やさなかった組の心拍が回を追うごとに高くなったのに対し、冷やした組はほぼ最初の水準に戻っていました。

唾液で測ったコルチゾールの最大の上がり幅は、冷やさなかった組で平均71.49%、冷やした組で平均0.92%でした。ただし、人による差がとても大きく、課題の間に出たコルチゾールの総量では、組の差ははっきりしませんでした。気分の質問(よい気分か・落ち着いているか・目がさえているか)は、どちらの組も課題のあとに悪くなり、組の差は統計的にはっきりしませんでした。

対象: ドイツの大学の講義で集めた健康な若い参加者28人(82%が女性、平均20歳)。分析は25人(冷やした組12人・冷やさなかった組13人) / 限界: 人数が少ない。冷やす効果は回を追うごとに弱まり、3回目は心拍の低下がはっきりしなかった。マスクは目・鼻・口を出す専用のもので、持病のある人や薬を飲んでいる人は参加していない。

Jungmannら(2018、ルクセンブルク大学)[2]

座った参加者の首の横・頬・前腕に、冷たくなる小さな器具(3cm四方)を1回16秒ずつ当てました。首を冷やしたときは、心拍のゆらぎ(ブレーキ役の神経の働きの目安)が増え、心拍もゆっくりになりました。頬では心拍のゆらぎは増えたものの、心拍の速さにははっきりした差がなく、前腕では心拍のゆらぎに差がありませんでした。

対象: 19〜51歳の61人(平均27歳、60%が女性) / 限界: ストレスをかけていない落ち着いた状態での実験で、気分やストレスの感じ方は質問していない。研究者自身も、ストレスの場面での検証が必要だと書いている。

Lundströmら(2025、スウェーデン・ウメオ大学)[3]

健康な中学3年生(15〜16歳)が、10℃の水に顔をつけました(平均約26秒)。心拍は大きく下がり、54人のうち6人に上室性の期外収縮、2人に心室性の二段脈という脈の乱れが記録されました。研究者は、顔を水に沈めて息を止める形では、危険が増えうると書いています。

対象: スウェーデンの健康な15〜16歳54人 / 限界: ストレスや気分は調べていない。大人や、保冷剤を当てる程度の冷やし方には、そのまま当てはめられない。

3つの研究を並べると、次のように整理できます。

03 まだわかっていないこと顔を冷やす方法は、職場でも効く?

まだわかっていません。ストレスの場面で試した実験は、若い大学生25人の1件だけです。働く大人の会議や締め切り前の焦りで同じように効くか、気分まで楽になるかは確かめられていません。

  • ストレスの実験で使ったのは−1℃の専用マスク。保冷剤やおしぼり、冷たい水での洗顔で同じ反応が起きるかは調べられていない。
  • 冷やしても、本人の気分がはっきりよくなったわけではない。心拍やホルモンの変化が、仕事のしやすさにつながるかも不明。
  • 参加者の8割以上が女性の大学生で、人数も少ない。年齢や体質で反応が違う可能性がある。
  • 深呼吸など、ほかの落ち着く方法と比べてどちらがよいかを調べた研究は見当たらない。

04 今日からできるセルフケア焦って心臓がバクバクしたら、何をすればいい?

布で包んだ保冷剤や冷たいおしぼりを、額から頬に1〜2分当てます。山場と山場の間の休みに使い、気持ちの面は呼吸や言葉での整理を組み合わせます。強い冷やし方は避けます。

1

布で包んだ保冷剤を、額から頬に当てる

ハンカチで包んだ保冷剤か、冷たい水でしぼったおしぼりを、目の上あたりから頬にかけて当て、座ったままふつうに息をします。実験のマスクも目・鼻・口は出していました。冷たすぎる・痛いと感じたらすぐ外します。

目安 1〜2分(実験は2分)

2

「山場の合間」に使う

実験で差が出たのは、課題の最中よりも課題と課題の合間でした。会議のあと次の会議の前、大事な電話を終えたあとなど、ひと区切りついたところで冷やして、体を元の状態に戻すきっかけにします。

目安 山場のあとに1回

3

気持ちの面は、呼吸と言葉で整える

冷やしても気分の差ははっきりしませんでした。ゆっくり吐く呼吸(深呼吸とストレスの記事)や、自分を名前で呼んで状況を言葉にする方法(仕事の焦りの記事)と組み合わせます。

目安 冷やしながら、または直後に1〜3分

4

顔を水に沈める・息を止めるやり方はしない

洗面器の冷水に顔をつけて息を止めるような強い方法は、健康な中学生でも脈の乱れが記録されていました。心臓や血圧のことで気になる点がある人は、無理に試さないでください。

目安 いつでも

05よくある質問

冷たい水で顔を洗うだけでも、同じ効果がある?

わかっていません。ストレスの実験で使われたのは、目・鼻・口を出して顔をおおう冷たいマスクを2分当てる方法でした。洗顔のように数秒で終わる冷やし方を、ストレスの場面で試した研究は見当たりませんでした。

保冷剤を顔に直接当ててもいい?

実験では専用の冷却マスクを使っており、保冷剤での安全な当て方は調べられていません。凍ったものを肌に長く直接当てると肌を傷めることがあるため、ハンカチやタオルで包み、冷たすぎると感じたら外すのが無難です。

冷やしたのに、気持ちはあまり落ち着かなかった

実験でも同じでした。冷やした組は心拍やホルモンの面では戻りやすかった一方、本人が答えた気分(よい・落ち着いている・目がさえている)は、冷やさなかった組とはっきりした差がありませんでした。体の反応と気持ちは、同じようには動かないことがあります。

顔を冷たい水に沈めて息を止めるのは?

おすすめしません。スウェーデンの健康な中学生54人が10℃の水に顔をつけた研究では、8人に脈の乱れ(期外収縮など)が記録されました。研究者は、顔を水に沈めて息を止める形では、危険が増えうると書いています。

プレゼンの前の緊張なら、緊張は外から思うほど見えないという記事、体のこわばりが抜けないときは筋弛緩法の記事も参考になります。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Richer R, Zenkner J, Küderle A, Rohleder N, Eskofier BM (2022). Vagus activation by Cold Face Test reduces acute psychosocial stress responses. Scientific Reports, 12, 19270. https://doi.org/10.1038/s41598-022-23222-9
  2. Jungmann M, Vencatachellum S, Van Ryckeghem D, Vögele C (2018). Effects of Cold Stimulation on Cardiac-Vagal Activation in Healthy Participants: Randomized Controlled Trial. JMIR Formative Research, 2(2), e10257. https://doi.org/10.2196/10257
  3. Lundström A, Karlsson M, Rydberg A, Wiklund U (2025). Assessment of arrhythmias and heart rate response in healthy adolescents performing face immersion and body submersion in ice-cold water. Physiological Reports, 13(13), e70430. https://doi.org/10.14814/phy2.70430