比べて落ち込む

周りがすごく見えて、自分だけ実力がない気がする。62件の研究のまとめでは、こうした「インポスター感」は珍しくなく、米国の女性研修医101人の試験では、6か月のオンラインのグループコーチングで和らいでいた

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わかっている度 ★★☆ 中研究4本・公的指針0件を整理
小川に並ぶ飛び石
Photo: Terry Jacombs / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

同僚も友人も、AIを使いこなす人たちも、みんな優秀に見える。うまくいったことがあっても「たまたま」「周りのおかげ」と思えて、いつか実力がないとばれる気がする。そんな感覚が長く続くと、比べるたびに自信が削られていきます。研究では、この感覚は珍しいものではなく、考え方を整理する練習と、同じ思いの仲間と話す場で和らいだという試験があります。

3行でわかる

  1. 62件・1万4,161人分の研究のまとめでは、「実績があっても自分は実力がない」と感じるインポスター症候群は、男女とも幅広い年代で報告され、割合は測り方によって9〜82%だった。落ち込みや不安と一緒にみられることが多かった。
  2. 米国の女性研修医101人の試験では、6か月のオンラインのグループコーチングを受けた組で、インポスター症候群の点数(0〜8点)が平均1.16点下がり、受けなかった組では0.11点上がっていた。
  3. 参加者への聞き取りでは、「出来事」と「頭に浮かんだ考え」を分けて見る練習と、「自分だけじゃない」と感じられる仲間の場が、役に立った点として挙がっていた。

01 結論から言うと「自分だけ実力がない」と感じるのはおかしい?

おかしくありません。実績があっても「自分は実力がない、いつかばれる」と感じる状態はインポスター症候群と呼ばれ、研究では男女とも、10代から熟練の職業人まで幅広く報告されています。和らげる方法を試した研究も出てきています。

インポスターは「偽物」という意味です。この感覚が強い人は、成功を自分の力ではなく、運やタイミングなど外の理由のせいにしがちだと説明されています。

周りと比べるほど「自分だけができていない」と感じやすくなり、それを埋めようと頑張りすぎて疲れる、という悪循環も指摘されています。ただし正式な診断名ではなく、研究では尺度で点数をつける「感じ方の傾向」として扱われています。どんな感覚で、どんな人に多いのかは「自分の実力じゃない気がする」のはなぜ?で整理しました。この記事では、長引いたときの立て直し方を試した研究を見ていきます。

02 研究とデータでわかっていることインポスター感は、どうすれば和らぐ?

米国の女性研修医の試験では、考え方を整理するオンラインのグループコーチングを6か月受けた組で、インポスター症候群の点数がはっきり下がりました。オンラインの取り組みを集めたレビューでも、2つの試験で同じ方向の結果でした。

−1.16点6か月のグループコーチングを受けた組の点数の変化(0〜8点)。受けなかった組は+0.11点(米国の女性研修医101人、2021年)
5.4点同じ試験の参加者の、始める前の平均点。5点以上が「インポスター症候群あり」の目安
2件医学生・研修医向けのオンラインの取り組み6件のうち、くじで組を分けた試験で点数が下がった数(2024年発表のまとめ)

Bravataら(2020年)[1]

インポスター症候群を調べた62件の研究(1万4,161人)をまとめた。割合は9〜82%と大きく違い、その差は主に、使った質問票と基準の違いによるものだった。男女どちらにもみられ、10代から熟練の職業人まで幅広い年代で報告された。落ち込みや不安と一緒にみられることが多く、仕事の満足度の低さや燃え尽きとの関連も報告されていた。

対象: 主に米国の学生と職業人。参加者の6割が女性で、年齢を報告した研究での平均は20歳 / 限界: 研究どうしの方法がばらばらで、2018年5月までの時点では、和らげる方法を試した研究は1件もなかった。

Fainstadら(2022年)[2]

女性研修医を2つの組にくじで分け、片方は6か月間、オンラインのグループコーチングを受けた。内容は、ライブの集団セッション、匿名で相談を書き込むと返事がもらえる場、成長できるという考え方・完璧主義・インポスター症候群などを扱う毎週の動画と書き込み用のシートだった。受けた組では点数が平均1.16点下がり、受けなかった組は0.11点上がった。自分への思いやりの点数も上がっていた。

対象: 米国コロラド大学の研修医101人(全員女性、平均29.4歳) / 限界: 1つの大学の小さな試験。終了後のアンケートに答えた人は、受けた組で68%と少なかった(欠けた分を補う分析でも結果はほぼ同じ)。

Mannら(2022年)[3]

同じプログラムの参加者17人に話を聞いた。役に立った点として、①出来事・考え・気持ち・行動・結果を分けて見る練習、②安心して話せる仲間の場、③自分のペースで選べる形、の3つが挙がった。「自分はこの処置が下手だ」を「この処置を学んでいるところだ」と言い換えた、という声もあった。

対象: 上の試験に参加した女性研修医17人(平均28.7歳) / 限界: 聞き取りによる研究で、効果の大きさは測っていない。1つの大学の研究で、著者ら自身も、ほかの施設の人にはあてはめられないと書いている。

Hsuら(2024年)[4]

医学生や研修医向けのオンラインの取り組みを調べた6件の研究をまとめた。くじで組を分けた試験のうち2件で、グループコーチングを受けた組のインポスター症候群の点数が、受けなかった組より下がっていた。1件は上の試験で、もう1件は26施設・1,017人の女性研修医を対象にした4か月のプログラムだった。燃え尽きへの効果は、研究によって結果が分かれた。

対象: 医療の道に進む学生・研修医(米国・カナダ・英国) / 限界: 研究は6件と少なく、どれも本人の自己評価で測っていた。医療以外の仕事や一般の人にあてはまるかはわからない。

03 まだわかっていないこと一人で取り組んでも、インポスター感は和らぐ?

まだ確かめられていません。効果が見られたのはコーチが進めるグループのプログラムで、その中のどの要素が効いたのか、一人で練習しても同じ効果があるのかは、今回の研究では区別できません。

  • 試験の対象は米国の女性研修医に限られる。男性や、医療以外の仕事、日本の働く人や学生で同じ結果になるかはわからない。
  • 動画・集団セッション・書き込みの場などを組み合わせたプログラムで、どの部分が効いたのかは分けて調べられていない。
  • 効果が6か月の終了後どのくらい続くかは、この試験ではわからない。
  • AIを使って出した成果を「自分の実力じゃない」と感じる場合については、まだ研究がない。

04 今日からできるセルフケア「実力がない」感覚から立て直すには?

研究のプログラムで使われていた考え方を、身近な形で試せます。出来事と考えを分けて書く、「できない」を「練習中」と言い直す、信頼できる人に話す、の3つです。どれもお金はかかりません。

1

「出来事」と「頭に浮かんだ考え」を分けて書く

「会議で発表した」(出来事)と「みんなより下手だった、ばれた」(考え)を、紙の左右に分けて書きます。研究のプログラムでも、出来事・考え・気持ち・行動・結果を分けて見る練習が中心でした。考えは事実ではなく、一つの見方だと気づく手がかりになります。

目安 1回5分、落ち込んだ日に

2

「できない」を「練習しているところ」と言い直す

「自分は〇〇が下手だ」と浮かんだら、「自分は〇〇を練習しているところだ」と書き直します。参加者の一人も、同じ言い換えで考えが変わったと話していました。うまくいったことは「運がよかった」で終わらせず、自分が準備したことを1つ添えます。

目安 1日1回、30秒

3

信頼できる人に「実は自分も」と話してみる

同僚や友人に「周りがすごく見えて、ときどき自分だけ実力がない気がする」と一言だけ話してみます。研究の参加者は、同じ思いを話せる仲間の場で「自分だけじゃない」と感じられたことを、役に立った点に挙げていました。

目安 週1回、5分の会話

比べて自分を責めてしまうときの工夫は人と比べて自分を責めてしまうときの「自分への思いやり」で、AIの完璧な出来と比べてしまう完璧主義についてはAIの完璧な出来と比べて、自分の仕事にOKが出せないときの研究で、「自分には才能がない」と思い込んでしまうときは才能がないと思い込んでしまうときの考え方の研究で整理しています。

05よくある質問

「自分だけ実力がない」と感じるのは、自分だけ?

いいえ、珍しくない感覚です。62件・1万4,161人分の研究をまとめたレビューでは、インポスター症候群(実績があっても「自分は実力がない、いつかばれる」と感じる状態)は男女とも、10代から熟練の職業人まで幅広い年代で報告されていました。割合は9〜82%と、測り方によって大きく違いました。

インポスター症候群は病気?

正式な診断名ではありません。研究では、診断のための病名ではなく、測定の尺度で点数をつける「感じ方の傾向」として扱われています。ただ、落ち込みや不安と一緒にみられることが多いと報告されているため、つらさが強いときは一人で抱え込まないことが大切です。

AIのおかげで成果が出たとき、自分の手柄と思えないのは同じこと?

研究はまだありません。今回の研究はAIが広まる前のもので、AIを使った成果の受け止め方は調べられていません。ただ、成功を運やタイミングのせいにしてしまう点は、インポスター症候群の説明と重なります。自分が決めたこと・確かめたことを書き出すと、自分の関わりを見直す手がかりになります。

コーチングを受けないと、よくならない?

そうとは限りませんが、一人での練習の効果を確かめた試験は今回見つかりませんでした。研究で効果が見られたのは、コーチが進めるグループのプログラムです。その中で使われていた、出来事と考えを分けて書く方法や、仲間と経験を話す場は、身近な形で試すことができます。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. Bravata DM, Watts SA, Keefer AL, et al. (2020). Prevalence, Predictors, and Treatment of Impostor Syndrome: a Systematic Review. Journal of General Internal Medicine, 35(4). https://doi.org/10.1007/s11606-019-05364-1
  2. Fainstad T, Mann A, Suresh K, et al. (2022). Effect of a Novel Online Group-Coaching Program to Reduce Burnout in Female Resident Physicians: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open, 5(5), e2210752. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2022.10752
  3. Mann A, Fainstad T, Shah P, et al. (2022). "We're all going through it": impact of an online group coaching program for medical trainees: a qualitative analysis. BMC Medical Education, 22, 675. https://doi.org/10.1186/s12909-022-03729-5
  4. Hsu CL, Liu CH, Huang CC, et al. (2024). The effectiveness of online educational interventions on impostor syndrome and burnout among medical trainees: a systematic review. BMC Medical Education, 24, 1349. https://doi.org/10.1186/s12909-024-06340-y