社内チャットで同僚の活躍が見えるたび、自分だけ力不足に思える。中国の会社員447人の調査では、仕事ぶりが見えやすいと感じる人ほど「実力以上に見られている」と思いやすく、人と比べやすい人でその傾向がはっきりしていた

社内チャットに、同僚の成果報告やお礼のメッセージが次々と流れてくる。そのたびに「自分だけ何もできていない」と感じる人は少なくありません。中国の会社員447人の調査では、仕事ぶりが見えやすいと感じる人ほど「周りは自分を実力以上に見ている」と思いやすく、その結びつきは人と比べやすい人ではっきりしていました。見る量と見方を少し整えることが、落ち込みをためない手がかりになります。
3行でわかる
- 中国の会社員447人の調査では、社内チャットで仕事ぶりが見えやすいと感じる人ほど、2週間後に「実力以上に見られている」と感じる度合いが高かった。
- その結びつきは、ふだんから人と比べやすい人で強く、比べにくい人では弱かった。
- 活躍する同僚に「自分もいずれ届く」と重ねられた教員は、比べてもよい気持ちになりやすかった。見る量を絞り、学べる点を探す見方が予防の手がかりになる。
01 結論から言うと社内チャットで同僚と比べて落ち込むのはなぜ?
社内チャットは、同僚の仕事ぶりを毎日見せる場所だからです。中国の調査では、見えやすさが「実力以上に見られている」という思いと結びつき、比べやすい人ほどその結びつきが強くなっていました。
以前なら、同僚がどんな成果を出したかは、会議や評価の時期に知る程度でした。社内チャットでは、成果の報告、上司からのお礼、うまくいった提案が、毎日のように目に入ります。
目に入る回数が増えると、比べる回数も増えます。そして多くの場合、見えるのは他人の「うまくいった部分」です。その結果、「みんなはできているのに、自分は周りが思うほどできていない」と感じやすくなります。この感じ方は「インポスター感情」と呼ばれます。
02 研究とデータでわかっていること仕事ぶりが見えやすい職場で、心に何が起きる?
仕事ぶりが見えやすいと感じる人ほど、インポスター感情が強く、仕事の満足感が低い関連がありました。人と比べやすい人ほどこの関連は強く、活躍する同僚との重ね方しだいで気持ちが変わることもわかっています。
Soら(2026年)[1]
金融・IT・コンサルティング・教育の4社で働く人に、社内チャットで「誰が誰とやりとりしているか、どんな情報を出しているかが見える」と感じる度合いと、人と比べやすいかを聞いた。2週間後に、「周りは自分を実力以上に有能だと思っている」と感じる度合い(インポスター感情)と、仕事の満足感を聞いた。
見えやすいと感じる人ほど、インポスター感情が強かった。インポスター感情が強い人ほど、仕事の満足感が低く、上司から見た「知識を周りに共有する」行動も少なかった。この流れは、ふだんから人と比べやすい人では強く、比べにくい人でははっきりした結びつきが見られなかった。
対象: 中国の4社の会社員447人(女性65%、31〜35歳が最も多い)と、その上司 / 限界: 時期をずらしたアンケートで、見えやすさがインポスター感情の原因とまでは言えない。結びつきの強さは小さめ(相関0.15)。仕事のやりとりと雑談の使い方を分けておらず、中国以外で同じかは確かめられていない。
Buunk・Brenninkmeijer(2022年)[2]
オランダの中等教育(日本の中学・高校にあたる)の教員に、自分よりうまくいっている同僚と比べたときの受け止め方を聞いた。2つ目の研究では、うまくいっている同僚か、うまくいっていない同僚の話を読んでもらい、気持ちを聞いた。
うまくいっている同僚に「自分と似ている」「いずれ自分も届く」と重ねられた人ほど、比べたあとによい気持ちになっていた。特に、ふだんから人と比べやすい人で、この傾向が強かった。一方、燃え尽きを感じている人ほど、うまくいっている同僚を「自分とは違う人」と感じやすく、比べたあとの気持ちが悪くなりやすかった。
対象: オランダの中等教育の教員156人と、別の教員190人(平均年齢44〜45歳) / 限界: 教員だけの研究で、社内チャットの場面は調べていない。アンケートの研究で、重ね方を変えると気持ちが変わるかを試したものではない。
Bravataら(2020年)[3]
インポスター感情を調べた62の研究(合わせて1万4,161人)をまとめた。インポスター感情がある人の割合は、測り方や基準によって9〜82%と大きく違った。男女どちらにも、10代から経験を積んだ働き手まで幅広い年代に見られ、落ち込みや不安、仕事の満足感の低さ、燃え尽きと一緒に見られることが多かった。
対象: 1966〜2018年に発表された62の研究 / 限界: 研究ごとに測り方がばらばら。インポスター感情を和らげる方法を確かめた研究は、このまとめの時点で見つからなかった。
03 まだわかっていないことチャットを見る量を減らせば、落ち込みは防げる?
まだわかっていません。社内チャットの見え方を変えて、インポスター感情や落ち込みが減るかを試した実験は、今回の調査では見つかりませんでした。今わかっているのは、見えやすさと感じ方の結びつきまでです。
- 社内チャットの通知を減らす、見るチャンネルを絞るといった工夫で、比べて落ち込むことが減るかは試されていない。
- 中国の調査は1回分の結びつきを見たもので、もともと自信のない人が見えやすさを強く感じた可能性もある。
- 日本の職場や、リモートワークが中心の職場で同じ結果になるかは確かめられていない。
- 同僚に「いずれ届く」と重ねる見方を、練習で身につけられるかは調べられていない。
04 今日からできるセルフケア同僚と比べて落ち込むのを、日頃から防ぐには?
追いかけなくてよいチャンネルを減らし、見る時間を決めます。活躍した同僚を見たら、自分が取り入れられる点を1つメモし、週に1回は自分の進み具合を書き出します。
追いかけなくてよいチャンネルを、通知から外す
自分の仕事に直接関わらない成果報告や全体向けのチャンネルは、通知を切るか、まとめて見る場所に移します。研究では、仕事ぶりが見えやすいと感じる人ほどインポスター感情が強い関連がありました。
目安 1回10分の見直し、月に1回
同僚の活躍を見たら「取り入れられる点」を1つメモする
「すごい」で終わらせず、「この進め方は自分もまねできる」という点を1行書きます。活躍する同僚に「いずれ届く」と重ねられた教員は、比べてもよい気持ちになりやすい結果でした。
目安 1回1分
週に1回、自分の進み具合を3行で書き出す
チャットに流れない自分の仕事(調整、下準備、学んだこと)を3つ書きます。他人の成果ばかり見える場所で、自分の進み具合を確かめる材料になります。
目安 週1回5分
比べる相手を前の自分にする方法は「前の自分」と比べる習慣の記事に、インポスター感情のしくみは「自分の実力じゃない気がする」理由に、AIを使いこなす同僚と比べて焦るときの研究は同僚と比べる焦りの記事にまとめています。
05よくある質問
社内チャットで同僚の成果を見ると落ち込むのは、自分が弱いから?
弱さの問題とは言えません。中国の会社員447人の調査では、社内チャットで仕事ぶりが見えやすいと感じる人ほど「実力以上に見られている」と思いやすい関連がありました。人と比べやすい人ほどこの結びつきが強く、誰にでも起こりうる反応です。
「実力以上に見られている」と感じるのは、インポスター症候群?
診断名ではありません。62の研究をまとめた論文では、こうした感じ方の多さは測り方によって9〜82%と大きく違い、多くの職業や年代で見られていました。このまとめによると、米国の精神医学の診断基準(DSM)や国際的な病気の分類(ICD-10)には載っておらず、記事では「インポスター感情」と呼んでいます。
同僚の活躍は、見ないようにしたほうがいい?
すべて見ないようにする必要はありません。オランダの教員の研究では、活躍する同僚に「自分もいずれ届く」と重ねられた人は、比べてもよい気持ちになりやすい結果でした。追いかけ続ける必要のない場所を減らし、見る場面では学べる点を1つ探すのが現実的です。
比べやすい性格は、変えられる?
性格そのものを変えた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。ただ、比べやすい人ほど、チャットの見えやすさとインポスター感情の結びつきが強いことはわかっています。性格を変えるより、見る量と見方を調整するほうが手をつけやすい方法です。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
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出典
- So C, Zhou Y, Du J (2026). "It Is Comparison That Makes People Miserable": Enterprise Social Media Visibility, Social Comparison Orientation, and Workplace Impostor Thoughts. Behavioral Sciences, 16(5), 782. https://doi.org/10.3390/bs16050782
- Buunk AP, Brenninkmeijer V (2022). Burnout, Social Comparison Orientation and the Responses to Social Comparison among Teachers in The Netherlands. International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(20), 13139. https://doi.org/10.3390/ijerph192013139
- Bravata DM, Watts SA, Keefer AL, Madhusudhan DK, Taylor KT, Clark DM, Nelson RS, Cokley KO, Hagg HK (2020). Prevalence, Predictors, and Treatment of Impostor Syndrome: a Systematic Review. Journal of General Internal Medicine, 35(4), 1252-1275. https://doi.org/10.1007/s11606-019-05364-1


